子供への食育と味付け、味覚との関係性
シンプルな仕立てが教えてくれること
最近、全然ご飯食べてくれない…
味付け、大丈夫なのかな?
アレルギー制限があるし、献立どうしよう…
こんなシーンが、子供とすごく食事時間には必ずあると思います。
我が家でも、下の子が乳製品アレルギーや、味付け、子供が好む味付けなど、試行錯誤の毎日です。
パパ料理人としての自身の子供に向き合いながら、料理の技術で工夫しながらアレルギー問題やプラントベースなどのヴィーガンなどの食の多様化も視野に入れながら、自身の子供と向き合う中でおいしさを深掘りしてみました。
s1nya.22これまで、野菜のピュレ、ソース、スープの味付けなど、様々な角度から試してみました。
牛乳やバター乳製品のコク、麹の旨み、ハーブの香りなど様々にアプローチや技法を重ねてみたこともあります。
けれど、子供が一番心地よさそうにしていたのは、いつも驚くほどシンプルな仕立てだった。
素材そのものを単一で活かすアプローチ、味付けも塩のみという、技巧を削ぎ落としたシンプルな仕立てがすごくいいという結果でした。
なぜ?その方がいいのか?
自身の経験とデータからも調べた結果をここに記録に残します。
子供の味覚はなぜ敏感なのか?
まず、なぜ子供の味覚は敏感であるのか?
その理由を下記から解説していきます。
↓
味蕾の数というデータ
人の舌には「味蕾(みらい)」と呼ばれる味のセンサーが存在しています。
複数の研究機関や専門家の解説によると、
味蕾は生後3ヶ月頃から増え始め、乳幼児の時点で1万個前後にまで達するとされる。
一方、加齢とともに摩耗・減少し、成人になると7,000〜7,500個程度まで減っていくという結果。
個人差はあるものの、子供の味覚センサーの数は大人の数倍にあたるという解説も多く見られが苦味や酸味、複雑な味わいに敏感に反応するのは、感覚として理にかなっていることがわかる。
年齢別による味わいの変化
味覚は、生まれる前から少しずつ育ち始め、年齢ごとの変化を追ってみると、子供への味付け=味覚の形成というものが、いかに段階的な営みであるかが分かります。
- 胎児期(妊娠中期〜)
- 妊娠20週頃から味を感じる器官・味蕾が形成され始め、母親が摂取した食材の風味が羊水を通じて伝わるとされている。
- にんじんや果物の風味を、すでに羊水の中で経験しているという報告もあり、胎児期の味の経験が出生後の味覚の好みに影響すると考えられている
- 「子どもの味覚は3歳までに決まる?」日本インストラクター技術協会 より引用
- 乳児期(0〜1歳)
- 生後5〜6ヶ月で離乳食が始まると、赤ちゃんは食べ物を通じて様々な味を知っていきます。
- 味だけでなく舌ざわりや食感、匂い、温度といった五感をフルに使いながら「おいしさ」を学んでいく時期
- 味蕾の数もこの時期にピークを迎える
- 「子どもの味覚を育てよう!」ヤマキ より引用
- 甘味・うま味・塩味は母乳の構成に近く本能的に好まれやすい一方、酸味(腐敗のシグナル)や苦味(毒のシグナル)は警戒される味として、生理的に避けられる傾向があるとされる
- 「味覚は幼少期に決まる!?」日本educe食育総合研究所 より引用
- 幼児期(1歳半〜6歳頃)
- 離乳期を終え、食べられる食材が一気に増えるこの時期は、味覚の感受性が特に高まる3歳前後を含み、この時期に経験した味や食材がその後の味覚の好みや食への意識の土台になっていくとされている。
- 「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」という五味をバランスよく経験させることが、味覚のストックを育てる上で大切だとされ、外食の機会が増え濃い味付けに触れやすくなるからこそ、家庭での薄味・素材中心の経験が土台として形成される
- 「幼児期の味覚形成のコツ」コクリコ / 講談社 より引用
- 学童期以降
- 成長とともに味蕾の数は徐々に減少し、味への感受性も緩やへ。
- 子供の頃は受け入れられなかった苦味や酸味を、大人になって好むようになるのも、この味覚の変化が背景にあるとされる、子供の好き嫌いの多くは「わがまま」ではなく、味覚センサーが鋭敏であることの裏返しでもある。
- 「子どもの好き嫌いはなぜ多いのか?」Yahoo!ニュース より引用



実はこの好き嫌いのような場面は必ずあるシーンの1つです。
僕も料理人の先輩と好き嫌い増えてきてなかなか大変ですよね!なんて話してたら理由を味覚センサーの変化だから時期を待てばいい!
逆に食事が楽しくなくなってしまったら、それこそ一番の問題と仰っていました。
料理人である自身としても、この段階ごとにどんな味わいを経験させるかという視点は、単なる好き嫌いの問題ではなく、その先何十年と続いていく「味覚の土台づくり」なのだと捉えながら日々過ごしています
味覚の変化グラフ表


食育という視点から見る、子供への味付け
「食を選ぶ力」を育てるということ
2005年に施行された食育基本法では、食育は知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけられ、様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を育むことが、その目的のひとつとされている。
「食育基本法」農林水産省 より引用
子供に何を、どう味わわせるかという日々の選択は、家庭の食卓だけの話ではなく、ひとりの人間が一生付き合っていく「味覚の選択力」を育む行為。
塩の味付け|減塩と素材を引き出すアプローチ


厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、年齢に応じた食塩摂取量の目安が示されており、
- 1〜2歳でおおむね3.0g未満
- 3〜5歳で4.0g前後
- 6〜7歳で5.0g前後
- 成人(7.0〜7.5g未満)に比べてかなり低い基準が設けられている
「子どもの塩分摂取量」 キッズリパブッリック より引用
子供の腎機能はまだ発達段階にあり、塩分を処理する力も大人より弱い。
だからこそ、塩を「強く効かせる」のではなく、素材の状態を見極めながら「最小限で輪郭を立たせる」という塩の使い方や素材の味わいを引き出すアプローチが重要であり、自然に食べた時のおいしさ、結果的な食育へ繋がる。
子供の食事に本能的においしさと健康を自然と求められる。



仕事でも家でも使用する塩は基本、岩塩を使用します。
(ピンクソルト、ゲランド塩など)
理由は、ミネラル分、味わいにも丸みがあるのが特徴です。
素材の味わいを引き出すアプローチ |引き算という調理技術
「うま味」という日本の発見
甘味・酸味・塩味・苦味という4つの基本味に加え、1908年に化学者・池田菊苗によって、昆布だしの中にそのどれにも当てはまらない味の存在が見出され、「うま味」として特定された。
「うま味発見から商品化への軌跡」 味の素 より引用
「日本が誇るだし文化」 うま味インフォメーションセンターより引用
この発見が示しているのは、何かを足すのではなく、素材そのものに内在する旨みを「引き出す」ことの中に、独立した美味しさが存在。
味の構成|侘び寂びの美学
2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」
その理由のひとつとして、
- 多様で新鮮な食材とその持ち味を尊重する点
- うま味を活かして動物性油脂を抑えた栄養バランスを実現している点
素材の味わいを活かす調理技術や道具が発達してきた背景には、自然を尊ぶという日本人の感性が本能的に根底に存在している。
「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」 農林水産省 より引用
削ぎ落とした先にある美しさ
侘び寂びという美意識は、不足や簡素さの中にこそ美を見出す日本独自の感性として知られている。
これは料理にも通じる感覚で、装飾的な複雑さではなく、削ぎ落とされた静けさの中に、素材本来の表情を立たせていくアプローチ、野菜や魚、肉、素材そのものを主役に据えるほど、何かを「足す」ことよりも「引く」ことの比重が大きくなっていく。
シンプルであることは、簡単であることとは違う。
塩味だけで美味しさを構築するというのは、一見すると最も簡素なアプローチでありながら、実際には最も技術が問われる仕立てとも感じる、その味わいや素地のポテンシャルを引き出すことが技術とも感じ、むしろ、細部に技術が宿るのは、こうした引き算の仕立ての中なのだと感じます。
素材の状態を見極める目、火入れの精度、塩を当てるタイミング…
削ぎ落とした分だけ、素材が光る一面。
実際のレシピ|塩のみのシンプルな味付け
子供が一番心地よさそうにしていた仕立てが、まさにこの人参ピュレ。塩だけで素材の甘みを引き出すアプローチです。
材料
- 人参 4本
- ピュアオリーブオイル 適量
- 水(ミネラルウォーター) 100〜250cc ※牛乳でも可、仕上がりに合わせて調整
- 塩 適量
※ピンクソルトやフルール・ド・セルなど、ミネラル感のある塩がおすすめ
作り方
- 人参の皮を剥き、厚さ4〜5mmにスライスする。
- 鍋にオリーブオイルを敷き、人参とひとつまみの塩を加え、優しく蒸し焼きにする(ブレゼとシュエが同時に行われているような火加減)。
- 時々混ぜながら水分を出しつつ火を入れ、人参が潰せる柔らかさになったら次へ。
- 水分を飛ばしながら炒め、旨みを煮詰めていく。
- 水分が飛び煮詰まったら、ミキサーがギリギリ回る量の水を加える(ミネラルウォーターだとクリアな仕上がりに)。
- ミキサーで滑らかになるまで攪拌して完成。






ポイント
乳製品は使わず、アレルギー対応と素材本来の味わいをストレートに表現することを意識しています。
バターや牛乳を加えれば、よりコクのあるリッチな仕上がりにもアレンジ可能です。



こちらのレシピは過去の投稿から引用したものになります。
ピュレなどは、
ここからスープやパスタソースなど
鶏肉と一緒に煮込んだり、甘口カレーなどにも派生できます。
子供の無垢さから学ぶもの
子供の舌が教えてくれること|自信の料理の在り方
- おいしさへの回答が素直。
- 複雑さよりは素材の味わいが分かるのが子供のおいしいへのストライクゾーン入る。



職業柄、自信を持って子供に出してもなんだかウケが良くない事もあったり、そんなことから少しアプローチや素材への考え方、味付け方に日々変化が出るようになりました。
引き算の味わい構成、侘び寂びの美学を、以前より意識的に取り入れるようにし、子供の舌は、まだ何も学習していない、まっすぐな状態で無垢さがあります。
その無垢な感覚が、複雑さの中で見失いがちな「素材本来の美味しさ」というものを、改めて思い出させてくれました。
技術を積み重ねていくほど、人はつい多くを語りたくなる…
けれど、本当に大切なものは、削ぎ落とした先にこそ宿り、そっと語っているぐらいがちょうどいんじゃないかなぁ…
とも感じます。
まとめ |子供と共に学び、原点回帰する
子供の味覚データ、食育という制度的な視点、減塩という健康的な必然性、そして和食やうま味、侘び寂びという日本文化の美意識。
これらを並べてみると、子供への味付けという、ごく個人的で日常的な営みの中に、料理人としての本質的な問いがすべて詰まっていることに気づきました。
もちろん、これが正解ではなく「おいしい」とは様々なアプローチが無数に存在します。
少しでも、あ!こんな考え方があるんだ!なんて引出しの1つになれば嬉しく感じます。
日々、子供と向き合う日々の中で、子供の機嫌や食に向き合うパパ目線と同時に料理人との目線が混在しています。
僕自身、料理を子供に作っていますが時折、失敗しやその度にアプローチを反省し考え直します、その時はなんだか原点にもう一度立ち返らせてもらっている気持ちで初心のような子供と同じ無垢な在り方を大切にしていきたいと感じています。
最後まで、ご閲覧 Merci ございました。
s1nya.22
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