ライ麦パンのレシピ|天然酵母サワー種の作り方

自家製サワードウブレッドの作り方
天然酵母×ライ麦パン レシピと発酵のこだわり

今回は、Innocenceが日々焼いているサワードウブレッドのレシピと、自家製サワー種の起こし方をご紹介します。

ライ麦 × 天然酵母 × 麹という組み合わせで、2種類の配合を並行してご紹介します。

サワードウブレッドとは?

目次

Bread(ブレット、パン)|レシピ

今回は2種類の配合を並行してご紹介。

ライ麦をしっかり感じる、ライ麦パン(イースト菌)

もう一方は天然酵母サワー種を主軸に置いたライ麦のサワードウブレット。

同じレシピでも、異なる味わいの表現。

クラム断面
(Hyderaid 67.5%)

Pain(ライ麦パン)|イースト

パンかご 21cm

素材分量備考
リスドォル250g
ライ麦粉150gライ麦比率 37.5%
塩10g
砂糖10g
麹 or 酒粕15〜20g甘めな麹、酒粕を選ぶ
イースト8g
水220〜250ml加水率は下表参照

Sourdough Bread(サワードウブレッド)| 天然酵母サワー種

パンかご 21cm

素材分量備考
リスドォル200gPainより50g減
ライ麦粉100gPainより50g減
塩13g
砂糖13gてんさい糖
(基本、指定なし)
麹 or 酒粕15〜20g甘めな麹、酒粕を選ぶ
天然酵母サワー種100g粉量を減らした分として加える
水220〜250ml加水率は下表参照
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サワー種を100g使用する場合、リスドォルとライ麦をそれぞれ50gずつ減らす。

サワー種の水分・粉分を配合全体のバランスに組み込むイメージで作っていきます。

加水率の目安

水の量加水率特徴
250ml62.5%締まった生地・成形しやすい
260ml65.0%バランス型
270ml67.5%現在の基準
(味わい、形状、クラムのバランスがいい)
280ml70.0%気泡が開く・軽い仕上がり

サワードウブレッドの作り方|工程

ミキシングと成形
 ↓
1次発酵|40分程
 ↓
ベンチタイム|15分程度
 ↓
2次発酵、発酵カゴに入れて|30分
 ↓
220°C 〜 230℃|10分前後(オーブンスプリング)
 ↓
190°C 〜 200℃|30〜40分程(クラム形成・焼き色)
  • 発酵具合は気温や天候なども影響するため、イメージしながら作業する。
    • 雨の日は、ほんの少し水分量を減らす。
    • あったかい場所では、発酵のスピードが速くなったり、逆に寒いところでは発酵が進まないため、生地の温度帯も意識する。
  • 麹、酒粕は少し甘めのものを選ぶ。
    • 甘みのニュアンスが、ライ麦の渋みと穏やかなサワー感のあいだで橋渡しをし、味わいのバランスが良くなる。
  • コネすぎない、グルテン形成を意識する。(歯切れのいいパン)

現時点での評価

ライ麦37.5%という数字のわりに軽く、歯切れがいい。

天然酵母由来の穏やかな酸味は主張しすぎず、料理の邪魔をしない。 麹の甘みが、後口にほんのり残る。

同じ工程でも、

  • イーストの方が歯切れがいいパンへ。
  • 天然のサワードウ酵母はほんの少しもっちりな仕上がりへ。

Innocence のパンへのこだわり

コンセプト|ご飯とサワードウの間の味わい、食感

Neither bread nor rice, but somewhere in between. 

「パンでもなく、ご飯でもない。その中間を目指す。」

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日本人にとって、ご飯は日常的であり、ある意味特別な存在。

主張しすぎず、何にでも寄り添い、それでいて確かな存在感がある。

パンでもそんな立ち位置ができないか…??
と考えたのが自家製のサワードウブレッド

サワードウが持つライ麦の歯切れ、穏やかな発酵の酸味。

コネ方による歯切れ、焼き方で生まれるクラストの歯切れの良さ、ほんの少し、ご飯とパンの間感が生まれるのようなイメージ。

単体でも料理やワインと一緒でも、どんな一皿にも添えられるブレッドが生まれるのではないか…?

という思想から、生まれたブレッド。

サワードウブレットの健康効果

循環(アップサイクル)の視点

今後の取り組みとして。

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食材を取り扱う仕事に必ず発生していまうのが廃棄物やロス。

以前からコンポスト作業など過去の投稿や食材ロス、世界的な廃棄率などの問題も発信してきました。

自身のパンにもこちら食材問題ロスに対するアプローチや食材のアップサイクルをブレッド=パンを活用しながら練り込み製造していく予定です。

いくつか、そんなアップサイクルの例を記載します。

廃棄するものからのアップサイクル(例)

ミルポワなどの出涸らしからのアップサイクル

  • 出汁の出涸らしなど(野菜カス)などをバットなどに広げ、オーブンなどで焼く。
  • 乾燥した状態にし、パウダー状(粉末)にする。
    • ポイントは、この時においしいパウダーにすること。
  • パン製作時にパウダー(粉末)を混ぜ込む。
ミルポワ(香味)野菜カス
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パウダー状にすると、コンソメパンチの様な味わいが特徴的でおいしいです!

調和、共存の視点

  • 地元湧き水との調和

酵母が最も活発に働くのは弱酸性(pH 5〜7)の領域で、グルテンの締まり方も水のpHに左右され、サワードウはその特性が特に顕著に出る。

発酵中、乳酸菌と酢酸菌が酸を生成し、生地のpHを自然に下げ、その環境が酵母を助け、グルテンを整え、独自の風味を形成していく。

浜松・龍清水のような軟水のクリアな水は、素材の個性をストレートに表現し、 水を選ぶことは、発酵そのものを設計し、味わいの調和、地域との共存を加える視点。


  • 日本の発酵、食文化視点からの共存

“麹”は日本の発酵文化の根幹|味噌、醤油、日本酒、みりん、甘酒…

あらゆる発酵食品の入り口に”麹”がある。

麹菌(Aspergillus oryzae)が持つ豊富な酵素群は、でんぷんをブドウ糖へ分解し、タンパク質をアミノ酸へと変える働きがあり、この働きをパン生地に加えることで、クラムにわずかな甘みのニュアンスが生まれ、発酵の複雑さが深まり、穏やかで丸みのある酸味になる。

日本の発酵文化と、北欧・フレンチの焼成パン文化が静かに交差する視点をパンの中にひっそりと滲ませる。

ここは、海外文化と日本文化の調和、共存のアプローチ。

自家製スターター種|サワー種

今回のSour(サワー)に使用している天然酵母サワー種は、粉と水だけから起こしている。

使う粉は、ライ麦全粒粉、リスドオル、水を使用|粉類 1 : 水 1

全粒粉は発酵が早く、力強い酵母ができるのが特徴。

酵母が安定し、元気な状態
上記の画像から、翌日の朝
全体的に発酵が進み、少し落ちている状態

1回目

容器と道具はあらかじめ煮沸消毒しておく。

雑菌の混入を防ぐことが、良質な種を作る第一条件。

ライ麦全粒粉 50g + リスドオル 50g + 水 1000g +ひとつまみ程度の砂糖(グラニュー、てんさい糖など)
→ 底からしっかり混ぜ、表面を平らに
→ 現在の高さをテープで印をつける
→ 27〜30℃で 24時間 発酵

2倍以上に膨らんだ後、1cmほど沈んだら1回目終了。

1回目はそれほど膨らまないこともある(酵母がまだ安定してないため)

丸1日(24時間)を目安に次へ進む。

2〜4回目

元種 50g + 水 150g + ライ麦全粒粉 50g + リスドオル 50g +ひとつまみ程度の砂糖(グラニュー、てんさい糖など)→ 元種に水を加えてよく混ぜ、粉を加えてさらに混ぜる
→ 側面の粉を落とし、表面を平らに
→ 高さに印をつけ直す
→ 27〜30℃で 24時間 発酵(ピークから1cm沈んだら次へ)

表面の黒っぽい乾燥した部分は毎回取り除いて捨てる。

使うのは底に近い内側の、気泡がたくさん含まれた部分50gだけ。 良質な菌は底にいる。

残った種(2番種)は冷蔵庫の野菜室で保管しておく。

後日、酸味を活かしたパンや料理に調味料的に使用可能。

完成の目安

4回のリフレッシュを経て、より多くの気泡と爽やかな酸臭がある状態がゴール。
(酵母が安定し、元気がある状態)

pH試験紙で確認できる場合、pH 5前後が発酵力のピーク。

すぐに使わない場合は冷蔵庫の野菜室へ。

3〜4日は保存可能だが、低温が続くと酢酸菌が増え、セメダイン臭が出ることがある。その際はリフレッシュで復活させる。

リフレッシュ(継ぎ足し)

元種 50g + 水 150g + ライ麦全粒粉 50g + リスドオル 50g +ひとつまみ程度の砂糖(グラニュー、てんさい糖など)→ 発酵ピーク後、1cm沈んだら完成
→ 完成後は24時間待たずに使用可

パン作りに100g使用したら、残りの種 100gにリフレッシュをかけて次へ繋いでいく。
(基本は半分使用し、半分は元種としておく)

この「サワー種の起こし方」は、富澤商店のレシピ(海野綾子先生)を参考に実践しています。

↓

参考|【保存版】サワードゥ(サワー種)の起こし方とリフレッシュ方法

糖を加える理由と酵母活性化のポイント

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発酵初期やリフレッシュ時にグラニュー糖やてんさい糖などを加える。

理由としては、

・スターターの酵母の餌の糖を与えること。

・素手で混ぜる。

理由は空中のバクテリアも取り込むことと、空気を抱き込むことで酵母が呼吸でき働きが活発になる。

発酵を促進する砂糖 より引用

手の常在菌|見えない個性が、発酵をつくる

素手で混ぜることには、もうひとつの理由がある。

私たちの手の皮膚には常在菌と呼ばれる微生物が常に棲んでいる。

常在菌とは、身体に常に存在する微生物群のことで、人によって、年齢によって、その日の環境によっても微妙に異なる。

菌の種類主な働き
表皮ブドウ球菌
S. epidermidis
短鎖脂肪酸を産生。旨味・酸味のニュアンスに寄与する
コリネバクテリウム皮膚の恒常性を保つ。発酵環境のバランスに関与する
乳酸菌系の菌群乳酸を産生し、穏やかな酸味と発酵の安定に貢献する

子どもの手が入ると、なぜおいしくなるのか?|食育という視点

味噌や発酵食品づくりに「子どもに手を入れてもらうとおいしくなる」という説があります。

これは感覚だけの話ではなく、子どもの皮膚の常在菌は大人と組成が異なり、Firmicutes(フィルミクテス)やActinobacteria(アクチノバクテリア)の割合が高いこと、大人の手とは異なるマイクロバイオームの個性を持っているため。

発酵は、どんな菌が、どんな割合でそこにいるかで風味が変わることや、異なる常在菌が加わることで発酵に多様性が生まれ、それが味わいの複雑さに直結しています。

子どもが発酵の段階から手を動かし、種を混ぜ、パンが育つ過程を観察することで、目に見えない菌の存在を、匂いや膨らみで感じること…

そして、完成したパンを一緒に食べること。

「食べものはどこから来るか?」

「どのように出来上がるのか?」を実際に楽しい体験として記憶に刻むこと。

誰の手が、どんな菌を持って、この種に触れたか…それもまた、ストーリーとなり発酵の味わいや記憶の1つになる。

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一緒にスターター創りをしました👧🦠

発酵という哲学

酵母の発酵は、コントロールの放棄(放置すること)ではなく、コントロールの設計と文化と感じます。

温度、時間、水の質、粉の種類、菌(バクテリア)の状態。

それらをできる限り丁寧に整えた上で、あとは菌に委ねる。

料理人として手を動かすのではなく、調和と共存の環境をを整え、待つこと。

大好きなナチュラルワインやハマってしまったパン作りもこんな考え、生き方、在り方が魅力的ですごく楽しいから!

まとめ

ご飯とサワードウの間

食文化と食べ方の感じ方、この曖昧でありながらも、どんな一皿にも、どんなゲストの食卓にも自然に添えられるブレッド。

地域の水、日本の麹、廃棄されるはずだった食材、そして手に棲む菌。
見えないものと、見えるもの。
それらが静かに交わって、ひとつのパンへ。

食育視点からも子どもの手が触れたスターター種からみんなで創るパン、その小さな驚きが、「食べものはどこから来るか」を体験から覚える最初の一歩に…

直向きに、創り続け、満足しない姿勢にこそ、料理の面白さが詰まっているし、夢中になれる。

そんなブレッドを、皆さんにも食べて欲しいです。

最後まで、ご閲覧 Merci ございました。

s1nya.22


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この記事を書いた人

自然 / 調和 / 共存 / 自由 / 無垢をテーマに

Chef at Restaurant Innocence(静岡県内にて開業準備中)

フランス・デンマーク・東京の現場で経験を積み、地元静岡へ

Le Pont de L'Ouysse(フランス・ミディ=ピレネー)
L'Auberge des Glazicks(フランス・ブルターニュ)
La Table de Joël Robuchon(東京)
AMASS(デンマーク・コペンハーゲン)
Simples、Caravin(静岡)を経て、現在は自身のテーマを軸にしたレストランの実現へ向けて準備中。

一皿の裏側の「食」バックグランドを
様々な造り手さん、生産者さんの想いや思考、自身のサステナブルな「食」の在り方、料理人の生き方を無垢に発信しています。

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