季節の食材と薬膳|春夏秋冬の食材の効能を料理人視点で解説

身体は、四季と在る|健康と季節の食材の働き

目次

四季の食材と、その静かな作用について

自然界には、見えないリズムがある。

朝が来て夜が来るように…

海や月夜が満ちて引いてを繰り返す潮のように…

春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来ること。

そのリズムに、自然と僕たちの身体は呼応しています。

現代では昔よりも「旬」を意識することが少なくなった。

当たり前のように、スーパーの棚にはいつでもトマトが並び、きゅうりが並び、 季節を問わず、同じ野菜が同じ価格で手に入る。

それは便利なことで、当たり前に感じてしまう、でも同時にその価値観こそがすでに少しズレている感覚であり、当たり前の感謝に対し少しずつ、意識が薄れていくとも感じます。

自然の摂理はもっとシンプルで本質的。

身体が必要なものを、自然界や季節がちゃんと用意してくれている。

それを紐解いていくと、僕たちの身体と自然の間に、 静かで深い「調和」があることも同時に感じます。

今回の記事では、旬の役割を意識しながら料理人目線で紐解いていこうと思います。

春 | 苦味は、冬を流す

「春の皿には苦味を盛れ」

土の下から、最初に芽吹く食材は苦く青い印象。

ふきのとう、たらの芽、せり、菜の花、わらび、こごみ。 山に入れば、あちこちから生命の気配が吹き出し、この「苦味」には、ちゃんとした意味が存在する。

冬の間、体は代謝を落とし、エネルギーを内側に溜め込む。

老廃物も、余分な脂肪も、一緒に蓄積されていく。

春になり気温が上がると、その排出を担うのが「肝臓」、 肝臓は活発に働き始める分、負担もかかりやすくなる。

春の山菜に含まれる苦味成分(植物性アルカロイド)は、 肝臓の解毒作用を高め、腎臓のろ過機能を助け、 腸を整えながら冬に滞ったものを外へ押し流してくれる役割。

身体の浄化に近い現象。

春の食材

  • ふきのとう 
    • 解毒・抗酸化・肝の熱を鎮める。
  • せり
    • 体の余分な熱を取り、水分代謝を整える。
  • 菜の花
    • 排泄・解毒・血流を促す。
  • たらの芽
    • 糖の吸収を抑え、腸を整える。
  • わらび、こごみ
    • 利尿・新陳代謝の活性化。

先人たちは「春の皿には苦味を盛れ」という言葉を残した。

科学的な言語など持たない時代に、身体で感じ、日常の一部となり知っていた。

春は「古きを退け、新しきを養う」季節。

体が動き出す前に、まず不要なものを手放すこと。

そのための食材が、雪解けとともに土から顔を出す…

自然はなんてシンプルで、美しい。

夏 | 熱を冷まし、水を巡らせる

夏野菜の多くは、作物の中に水を持っている。

きゅうり(約95%が水分)、トマト、なす、ゴーヤ、冬瓜、オクラなど

生のまま食べられるものが多く、火を使わずに食べられるのが特徴で暑い夏に、身体への静かな気遣いも感じる。

薬膳では、夏の野菜の多くが「寒涼性」に分類される。

つまり、体の余分な熱を冷ます性質を持つ食材が多いのも特徴の1つ。

季節的にも身体が熱を持つ季節に、作物は大地から育ってくる。

夏の食材

  • きゅうり
    • カリウムが豊富で、体内の余分なナトリウムを排出する働き。
      むくみを解消しながら体を涼しく整え、 薬膳では「涼性」、暑さによるほてりや渇きをやわらげる食材として位置づけられる。
  • トマト
    • リコピンが血管を柔らかくし、血流を整える働き。
      ビタミンC・Eも豊富で、夏の疲れた体の回復を助け、「甘味と酸味」を合わせ持ち、体に潤いを補う食材でもある。
  • ゴーヤ
    • 独特の苦味成分が、夏バテで乱れた体の代謝を整える。
      その苦味は春山菜と同様、余分な熱を取り除く「清熱」の働きを持つ。
  • なす
    • 体の熱を冷まし、血の巡りを整える。
      加熱してもその性質が活きるため、夏の炒め物や焼き物に向く。

いずれの夏野菜も、薬膳でいう「清熱」「解暑」「生津止渇」、 つまり熱を取り、暑さの不調を和らげ、潤いを補うという働きを備えている。

ただし、冷やしすぎには注意が必要。

体を冷やす食材ばかりを食べると、胃腸が疲弊し、夏バテの原因にもなる。

そこで組み合わせたいのが、みょうがや生姜などのどちらも身体を温め、 気の巡りを整える食材も加えること。

「冷やす食材」と「温める食材」を一皿の上に共存させる。

それが夏の料理における健康な身体づくり、季節や思想の「調和」

秋 | 蓄え、潤し、備える

夏の消耗を、秋は静かに回収する。

れんこん、さつまいも、里芋、人参、ごぼう、栗、きのこ類など。

土の中でじっくりエネルギーを蓄えた食材たちが、地上に顔を出す。

薬膳では秋のテーマは2つ。

「肺を潤すこと」と「冬に向けてエネルギーを蓄えること」

秋の乾燥した空気は、肺を傷めやすい。

空咳、乾燥肌、便秘など。

これらは「肺の乾き」から来るとされる。だから秋は、体の内側を潤す食材が豊富に出回り、予防や冬への身体づくりのような季節になる。

秋の食材

  • れんこん
    • 肺を潤し、粘膜を整える。
      止血・消炎作用
  • さつまいも
    • デンプン質が体力を蓄え、冬への身体づくりを補助。
  • 里芋 
    • 胃腸を温め、消化を整える。
  • きのこ類 
    • 免疫力を高め、腸内環境を整える。
  • 梨、柿、りんご 
    • 肺を潤し、乾燥から身体を守る。

また、秋は果物からも「酸味」を意識したい。

りんご、ぶどう、柿、梨など、 酸味には「収斂作用」があり、体のエネルギーを外に発散させず、 内側にとどめておく働きがある。

冬に向け、身体が本能的に食欲を高める季節。

何を食べるかに少しだけ意識を向けてみる。

旬の根菜を、火を入れてゆっくり食べる。作物は甘味が増し糖化し栄養素も向上する。

調理の方法や温かいものを欲する季節になることで、自然と冬の身体のつくられ方へ変化し適応していく。

冬 | 内に根を張り、静かに次の春を待つ

外ではなく体内環境を整える季節。

冬の食材

大根、かぶ、ごぼう、白菜、ねぎ、みそ、漬物、根生姜。 身体を温め、免疫を整え、腸を養う食材が主役。

薬膳では冬は「腎」の季節。

腎は「生命エネルギーの根っこ」とされ、 それを温め守ることが、来る春の芽吹きへの準備になるとされている。

寒さの中で体を動かし続けるために、 生姜・ねぎ・にんにくのような発汗・保温の食材が活きてくる。

発酵食品も作物の栄養価を高め、消化しやすくなり、腸内環境を整え、免疫の底力を高める。

そして冬の食養生でもう一つ大切なこと…

食べすぎず、消化=身体に負担をかけないこと

自然界では冬は蓄え、静かに準備する時期。

熊が冬眠するように、樹木が根に養分をため込むように、 人間の体も余分に消耗せず、内側を整えることが、 次の春への土台を作る。

シンプルな汁物、温かい根菜の煮物、発酵の力を借りた一皿。

そこに派手さはないけれど、身体の深いところに届く料理や労りが、冬の自然の雰囲気にどこか似合う。

四季は、一つの大きなサイクル

春に流して、夏に冷やして、秋に蓄えて、冬に根を張る。

この流れを見ていると、身体と自然が一つの大きなサイクルの中で呼応し合っていることがわかる。

旬のものを、旬の季節に食べること。自然のことだけど、そのことが、身体の深いリズムに沿った行為であり、文化そのものでもあります。

現代の食卓は、その「旬」への意識が薄れてしまったこと、常に当たり前にあるという認識は環境問題などと共に崩れ始めている現実。

年中同じ野菜、同じ価格、同じ見た目。 当たり前の便利の代わりに、身体と自然の間にあった対話が、少しずつ失われていってしまっているとここ最近、強く感じます。

料理人として、僕が皿の上で伝えたいことの一つは、 その季節との対話を取り戻し、当たり前の感謝を無垢に向き合うことだと感じます。

春の苦味が、そこにある理由。

夏のきゅうりが、身体を整える理由。

秋のれんこんが、肺を守る理由。

冬を越す知恵が、体内環境守り春を待つこと。

それを知って食べるのと、知らずに食べるのとでは、 同じ一皿でも、身体への届き方が変わると確信します。

身体は、季節を知っている。自然と文化と共に共生していて、食材も、季節を知っている。 あとは、僕たちがそれらにほんの少し気持ちのベクトルと傾けるだけ。

四季 × 食材|早見表

季節テーマ主な食材(例)体への主な作用
春流す・解毒山菜、菜の花、せり、ふきのとう、など肝臓サポート・老廃物排出・腸を整える
夏冷やす・潤すきゅうり、トマト、なす、ゴーヤ、など清熱・解暑・むくみ解消・水分代謝
秋蓄える・潤すれんこん、根菜、きのこ、柿・梨、など肺を潤す・エネルギー蓄積・免疫基盤
冬温める・守る大根、ねぎ、生姜、みそ、漬物(発酵食品)、など腎を温める・腸を整える・免疫強化

四季を盛る|自然の営みに寄り添う

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料理人の中では、この四季(自然)を盛る。

パッと浮かぶのは、やはりミシェル ブラスと感じます。

ミシェル ブラス|セバスチャン ブラス

ミシェル ブラスのスペシャリテ

  • ガルグイユ
    • 数十種類の野菜やハーブ、花々を一つひとつ仕立てて盛り付ける「ガルグイユ」
      この料理には、「食べてくれる人に、自然の息吹や四季の移り変わりをそのまま届けたい」という情熱が込められています。
ミシェル ブラス

ガルグイユとは私の人生そのものです。
つまりそれはオーブラックの自然であり、家族への愛情であり、私が歩んで来た道です。

料理人が幸せでなければ、誰かを幸せにする料理はつくれないよ

ミシェル ブラス

これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない。
この世に完璧というものはないんだ。ただ、完璧を追い求める姿勢だけがあるんだよ。

料理は仕事ではなく、それ以上の情熱です。

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一皿の料理の背景には、自然、家族、生き方、在り方がそのまま反映された料理とも感じます。

また、その姿勢は完璧とは存在しなく、自然のあるがままの在り方や敬意とも感じます。

その追い求める姿勢こそが、夢中であり、情熱的で生き方そのものに魅力が生まれている=その一皿が輝く!そんな料理人的視点や自然、家族を想う在り方がカッコいいと感じます。

まとめ

四季を通し、食材が与える身体への変化。

自然の摂理やその環境に適応していくための在り方そのものやミシェルブラスの様な自然に対し、謙虚であり常に探求や身近な大切な人への愛。

自然体であり、寛大な在り方そのものにとても価値を感じると共に、今一度、四季の在り方、料理や、その労りの心、身近な大切な家族、自然と共に歩むことの重要性がこの記事を通し、少しでも感じてもらえたら嬉しく思います。

最後まで、ご閲覧 Merci ございました。

s1nya.22


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この記事を書いた人

自然 / 調和 / 共存 / 自由 / 無垢をテーマに

Chef at Restaurant Innocence(静岡県内にて開業準備中)

フランス・デンマーク・東京の現場で経験を積み、地元静岡へ

Le Pont de L'Ouysse(フランス・ミディ=ピレネー)
L'Auberge des Glazicks(フランス・ブルターニュ)
La Table de Joël Robuchon(東京)
AMASS(デンマーク・コペンハーゲン)
Simples、Caravin(静岡)を経て、現在は自身のテーマを軸にしたレストランの実現へ向けて準備中。

一皿の裏側の「食」バックグランドを
様々な造り手さん、生産者さんの想いや思考、自身のサステナブルな「食」の在り方、料理人の生き方を無垢に発信しています。

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